ようやく二冊の大著の翻訳が終わるので、ずっと放置していた博士論文の加筆修正および出版に向けた作業を始めようと思います。ここではひとまず論文目次(詳細版)を掲載してみます。
この博士論文では、ヴァイマル共和国時代の群集(Masse)をめぐる言説の展開を、文学、思想、社会学、精神分析学などの言説ジャンルの境界を横断する視点から考察しています。このような領域横断的アプローチを採用することにより、この論文はヴァイマル共和国時代の群集をめぐる膨大かつ多様な言説の根底にある共通の理論的枠組み(パラダイム)を指摘し、さらにそのパラダイムが共和国の社会的状況の変化とも連動するかたちで二度にわたって大きく変容したことを明らかにしています。さらにまた、ヴァイマル共和国時代についての文学研究として、この論文は当時群集というテーマを媒介として文学作品と同時代の理論的言説とのあいだに生じた多様かつ密接な諸連関を照らし出すことを目指してもいます。これまでの文学作品に限定された研究においては見逃されがちであった当時の文学的実践の力学の一側面が明示されています。
大阪市立大学文学研究科では、ドイツ・ビーレフェルト大学名誉教授ヨアヒム・ラートカウ氏によるレクチャーを下記の日程で開催します。一般の方の参加も歓迎しますので、ご関心をお持ちの方はお気軽にご来場ください。
Germany, Japan and the Atom: a Nuclear Approach to Comparative History
Prof. Joachim Radkau (Bielefeld University, Germany)
主催:大阪市立大学文学研究科重点研究
共催:大阪市立大学文学研究科インターナショナルスクール
日時:2012 年 1 月 31 日(火)18:30-21:00
場所:大阪市立大学文化交流センター(大阪駅前第2ビル 6 階)、大セミナー室
*参加費無料/事前申込不要/一般来聴歓迎
*使用言語:英語(ただし質疑応答には通訳がつきます。)
講演概要:日独両国の戦後史には目立った共通点がある。ともに破滅的な敗戦から立ち直り、「経済の奇跡」を経験し、ともに核保有を求めながら核保有国とはならなかった。両国は核をめぐって長く似たような歩みを経験してきた。ドイツでは当初「平和的な核」への熱狂は日本より大きかったが、その後核をめぐる論争は世界のどの国よりも熱を帯びて持続した。福島原発事故も、ドイツでは日本よりも大きな反響を呼んだように思われる。核エネルギーの歴史はパラドックスに満ちている。日独の相互比較から見えてくるものを考えたい。
講演者紹介: ヨアヒム・ラートカウ(Joachm Radkau)。原子力技術・産業史、環境史、森林史、技術史、マックス・ウェーバー研究で活躍中。環境史の大著『自然と権力』(海老根剛・森田直子 訳)がみすず書房より刊行予定。講演に関係する文献として「ドイツ反原発運動小史」(上)(下)(森田直子・海老根剛 訳)『みすず』599号(2011年11月号)、600号(2011年12月)がある。
先月号に続いて、ドイツの環境史家ヨアヒム・ラートカウ氏の論考を『みすず』(12月号)に訳出しています(森田直子さんと共訳)。この後編では、1980年代から現在にいたる運動の展開が論じられています。キーワードは、緑の党、原子力と核武装、チェルノブイリ、最終処分地問題、新しい啓蒙などです。関心のある方はぜひ読んでみてください。
なおラートカウ氏の主著『自然と権力』は来年早々にもみすず書房から刊行の予定です。
ドイツの環境史家ヨアヒム・ラートカウ氏が1983年に出版した大著 “Aufstieg und Krise der deutschen Atomwirtschaft 1945-1975″ の結論部分(「結論:研究成果といくつかの実践的帰結」)を著者の許可を得て翻訳掲載します。『みすず』(2011年11・12月号)に掲載された「ドイツ反原発運動小史」の関連文献としてお読みください。
『みすず』12月号の訳者付記にも書きましたが、この500頁を超える技術社会史的研究(『ドイツ原子力産業の興隆と危機』)は、研究省の議事録などの内部資料の分析、関係者への聞き取り調査(インタビュー)、そして原子力技術の細部の詳細な検討を通して、原子力技術の社会的形成過程を描き出しています。ラートカウ氏はそこで、原子力技術が政治、産業界、科学(アカデミズム)のあいだでどのように形作られていったのかを明らかにするとともに、「新しい啓蒙」としての反原発運動がいかにして原子力技術の潜在的リスクに反応し、原子力をめぐる議論を公共の場に開くことになったのかを分析しています。いまだ原発のエコロジー的正当化(地球温暖化対策としての原子力エネルギー)も再生可能エネルギーの推進もほとんど話題になっていなかった時代(チェルノブイリの事故もまだ起こっていませんでした)の研究ではありますが、今日にも通じる原子力技術の問題がすでに論じられていると同時にユニークな技術社会史の試みでもあるのでここに訳出する次第です。
なお英語やドイツ語では原子力エネルギーや原子力技術は通常、「核エネルギー」(nuclear energy、Kernenergie)および「核技術」(nuclear technology、Kerntechnik)と表記されます。これを「原子力(エネルギー/技術)」と呼ぶことは、すでに軍事技術との結びつきを見えにくくする婉曲的な表現であり、問題がないとは言えません。したがって、本稿では一貫してKernenergieを「核エネルギー」、Kerntechnikを「核技術」と訳していることを付記しておきます。
海老根剛
Neue Beiträge zur Germanistik(ドイツ文学)130号の特集「群集と観相学/群集の観相学」(平野嘉彦責任編集)のために執筆した論文です。特集は近代の群集論を「ベンヤミン・モデル」と「カネッティ・モデル」に分類し、ドイツ語圏の作家・思想家を中心にそれぞれのタイプの群集論の歴史的展開を考察しています。
扱われている作家・思想家は、江戸川乱歩、萩原朔太郎、ルソー、ボードレール、ル・ボン、タルド、ポー、ホフマン、グリルパルツァー、ベンヤミン、デーブリーン、クライスト、ティリヒ、ガイガー、フェーデルン、フロイト、H・ブロッホ、カネッティなど。
学会誌としては(?)かなり充実した特集になっております。私は群集心理学の章を担当しました。
Eine Untersuchung über den Amerikanisierungsdiskurs und den Umwandlungsprozess des Amerika-Bildes im Zusammenhang mit der Diskussion über die Rationalisierung der deutschen Wirtschaft in der Weimarer Republik . (In: Neue Beiträge zur Germanistik, Band 5, Heft 1, 2006, Indicium Verlag, München.)
Die “deutsche” Rationalisierungsbewegung und der “Amerikanismus”.(PDF)
本論文は、20世紀前半のドイツ語圏において生み出された群集をめぐる思考の展開を考察する研究の一部です。ここでは、1920年代の中頃に形成された群集論の新たなパラダイムについて考察しています。
『表現文化』(大阪市立大学大学院文学研究科表現文化学教室) no. 2.、2007年に掲載。
11月号の「みすず」にて、現在のドイツを代表する環境史家であり、また国際的に見ても最もユニークな仕事をしている歴史家の一人でもあるヨアヒム・ラートカウ氏の論考を森田直子さんと訳出しています。このテーマに関心のある方はぜひ読んでみてください。
『みすず』11月号
来月には後編が掲載されます。
なおラートカウ氏の主著『自然と権力』は来年早々にもみすず書房から刊行の予定です。
In diesem Aufsatz geht es um die Relevanz der “Ekstase” im Massendiskurs der 1920er Jahre im deutschsprachigen Raum. (In: Neue Beiträge zur Germanistik, 2004 Band 3, Indicium Verlag, München.)
PDF版 (227KB)
「steg と歩くハンブルク ザンクトパウリ地区のリノベーション&コンバージョン事例を中心に」(2010年)
撮影・編集・字幕制作 海老根剛 / 撮影 2009年11月 / 上映時間 29分04秒
このビデオは2010年8月24日に大阪市立大学文化交流センターで開催されたワークショップのさいに、参考資料として上映されたものです(ウェブでの公開にあたって、若干の修正が加えられています)。このワークショップは大阪市立大学都市問題研究の主催、船場アートカフェの共催で行われました。
steg(シュテーク)はハンブルク市を本拠地として都市再開発・地区更新を行う民間会社です。ドイツでも例をみないユニークな組織形態のもと、コンバージョンやリノベーションを積極的に活用しつつ、地域に根ざした活動を展開しています。
ビデオの公開を快諾してくれた steg に感謝します。
海老根剛(大阪市立大学)
Das ist eine Videodokumentation über die steg und ihre Projekte. Die steg ist ein auf Stadterneuerung spezialisiertes Unternehmen in Hamburg. Dieses Video wurde am 24. 8. 2010 in Osaka bei einem Workshop zum Thema “Renovierung und Konversion als Methoden der Stadterneuerung” gezeigt. Ich danke der steg für Ihr Einverständnis mit der Veröffentlichung des Videos im Web.
Takeshi EBINE (Osaka City University)
This is a video documentary about the steg, a company specializing in urban renewal projects in Hamburg, Germany. This video was shown at a workshop in Osaka, “Renovation and conversion as methods of urban renewal,” on August 24, 2010. I appreciate the generosity of the steg in publishing this video on the web.
Takeshi EBINE (Osaka City University)
