エクセレンスの大学、人文学、都市

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◆要 旨
この試論の主題は、大阪市立大学文学研究科の過去10年間の歩みをいくつかの観点から考察し、現在研究科が直面している状況の一端を明らかにすることである。大阪市立大学文学研究科のこの10年間の軌跡を振り返るとき、その起点に見出されるのは文部科学省「21世紀COEプログラム」の採択(2002年)である。「都市文化創造のための人文科学的研究」という題目のもと、「都市文化学」という新たな学際的学問領域の確立を目指したこのプログラムは、都市・大阪・アジアという今日の文学研究科の研究活動における重点領域の形成に寄与するとともに、「都市文化研究センター」や「インターナショナルスクール」といった今日の文学研究科を特徴づける組織を生み出した。文学研究科の過去10年間は、良くも悪くもこの COプログラムの遺産によって規定されていたと言うことができる。本論ではまず、こうした文学研究科の歩みをより広い視点から考察するために、ビル・レディングズによって提出された「エクセレンスの大学」という概念を導入する。というのも,文科省のCOEプログラムもまた,高等教育のグローバル化の文脈における「エクセレンス」の追求の日本における現れだからである。そのうえで本論は、ドイツと日本の大学におけるエクセレンスの追求の具体的な進展を比較検討する。これによって日本の大学改革がグローバルに進行する構造変化の一部であることが明らかになる。こうしたエクセレンスの追求は理系中心に進行するため、しばしば人文学の危機として論じられる。本論ではドイツにおいて人文学の危機を考察したハンス・ウルリヒ・グンブレヒトの分析を参照し、彼が人文学の核心にあるとみなす「リスクをはらんだ思考」を検討する 最後に本論は、以上の考察から得られた認識にもとづいて、大阪という大都市に立地する文学研究科の現状と今後の課題について簡潔な考察を加え、結論とする。

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