Wortfetzen

愚か者たちのいない場所で / 『可傷的な歴史(ロードムーヴィー)』

京都のE9で田中功起の『可傷的な歴史(ロードムーヴィー)』を見る。 E9は劇場なので厳密には映画館ではないけれども、今回の上映のフォーマットは完全に映画館と同じだった。大きなスクリーンがあり、それに向き合うかたちで階段状に座席が並べられ、完全に暗転された状態で他のお客さんといっしょに同じ映像の投影を見つめる。完全に映画である。にもかかわらず、この作品からはまったく「映画」の匂いがしなかった。作家も …

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Nonadherence is a matter of practicality, not psychology.

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は昨年8月下旬にあった定例記者会見で、新型コロナウイルスを eine demokratische Zumutung と呼んで話題になった。Zumutung はとても翻訳しにくい言葉で、「なにか非常に厄介で、通常なら到底受け容れられないような事柄を他人に要求すること」を意味する。つまり、Covid-19 は、移動の自由、営業の自由、集会の自由といった民主的社会の根幹にか …

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セルゲイ・ロズニツァ 自由裁量の王国

ロズニツァの『アウステルリッツ』(2016年)でもっとも驚かされるのは、被写体への関与の徹底した欠如だ。この映画には被写体と向きあうという契機がほとんど存在しない。撮影する側が被写体のふるまいや存在の仕方に影響を与え、撮影されることで被写体が変化するというようなプロセスが存在しないのと同様に、被写体の側から撮影する側に向かって何らかの力が反作用することもない。撮影する監督と被写体となる人々のあいだ …

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