今年の秋はドイツの連邦議会(Bundestag)と日本の衆議院で相次いで選挙があった。
ドイツでは誰も望んでいなかった大連立がようやく終わり、社会民主党(SPD)・緑の党(die Grünen)・自由民主党(FDP)の連立政権が成立しそうな流れ。日本では政権交替を望まない人々が投票者の多数を占めることが明瞭になり、現行の選挙制度が続く限り、少なくとも今後10年は自民党政権が続きそう。個人的には、諸々の理由から、いまの20代の人たちがキャスティングボードを握れるようになるときまで、社会の大きな変化は起こらないと思っている。どれだけ迅速に彼らに物事を進める権限を委譲することができるのか。そこに未来はかかっている。
ところで今回のドイツの選挙では、報道メディアの特設サイトがとても充実していた。データに基づいて選挙結果を分析できるインタラクティヴなページも多く、選挙報道の点でもイノベーションを感じることが多かった。とりわけ週刊新聞ツァイト(die Zeit)による選挙結果のデータをビジュアル化したページはとても良くできていて、新しい連邦議会の構成を色々な角度から手軽に検討できるようになっていた。
Bundestag: So groß und jung wie noch nie
一方、日本の選挙では、報道機関のウェブサイトが軒並み貧弱で、どこも千篇一律のチャートしか掲載していない。インタラクティヴにデータをビジュアル化できるような工夫もなく、データにもとづく分析も薄く、情報の解像度がおそろしく低い。おそらくデータは集めているのだろうからどこかで詳細な分析をしている人はいるのだろうが、メディアが国民に提供する情報はひどく解像度の低い粗雑なイメージに変換されている。これでは現実に生じている変化が見えなくなり、「変わらない現実」のイメージが再生産され固定化されることになる。その結果、変化の芽は潰される。いまやほとんどのメディアは社会変化の減速装置としてしか機能していない。新聞社のサイトでは、新型コロナ関連も含めて相対的に解像度の高い情報を提供できているのは、電子版のサブスクリプション・システムが機能している日本経済新聞だけだ。たとえば、選挙結果のデータを分析した記事では、以下の日経の記事がもっともよくまとまっていた。
というわけで、ドイツと日本の総選挙の基本的なデータを比較しようとしてみたら、結構、手間がかかってしまった。せっかく調べたので、以下、関心のある人向けにメモしておく。
ドイツ
- 投票率:76.6%
- 最高齢議員:80歳
- 最年少議員:23歳
- 30歳以下の議員の割合:10%
- 40歳以下の議員の割合:31%
- 70歳以上の議員の割合:1%
- トランスジェンダーの議員:2名
- 女性議員の割合:35%(前回:31%)
- 新人議員の割合:38.2%(前回:38.9%)
- 議員の平均年齢:47.3歳(前回:49.4歳)
日本
- 投票率:55.93%
- 最高齢議員:82歳
- 最年少議員:29歳
- 30歳以下の議員の割合:0.2%
- 40歳以下の議員の割合:4.9%
- 70歳以上の議員の割合:8.8%
- トランスジェンダーの議員:0名
- 女性議員の割合:9.7%(前回:10.1%)
- 新人議員の割合:20.9%(前回:12.1%)
- 議員の平均年齢:55.5歳(前回:54.7歳)