このたび拙著『人形浄瑠璃の「近代」が始まったころ 観客からのアプローチ』(和泉書院)が、第35回吉田秀和賞を受賞しました。
審査員の講評と私のコメントは水戸芸術館のサイトに掲載されています。
上記サイトのコメントでも書きましたが、人形浄瑠璃の近代への歩みを観客史の観点から論じた本書を「芸術評論」として評価していただいたことをとても嬉しく思います。これまで書店などで人形浄瑠璃関連の本が並ぶ棚を見るたびに、古典芸能の本は芸術全般に興味がある人々が読む本としては認識されていないのだなと感じてきたのですが、この受賞をきっかけに芸術に関心のある多くの読者に本書が迎えられることを期待しています。
本書は第四章で近代的な浄瑠璃批評の展開を論じています。いまやどのジャンルを見ても青息吐息の批評ですが、私にとっては重要な言語実践であり、映画批評はもとより、学術論文であっても、つねにその根底に批評性を含んだ仕事をしてきたつもりです。今回受賞した拙著にも、間違いなく批評の血が流れています。そのような拙著が稀代の音楽批評家の名を冠した賞を受賞したことが、なによりも嬉しいことでした。拙著の執筆をサポートしてくださった多くの方々に感謝します。ありがとうございました。