直前のお知らせになってしまいましたが、日本独文学会秋季研究発表会でシンポジウム「シンポジウム「「群集」を再訪する——ただしパトスなしに / 両⼤戦間期ドイツ語圏の⽂学における群集表象の再検討」で研究発表を行います。
このシンポジウムでは、2000 年代以降に⼈⽂学諸分野で⽣じた群集(Masse)とい う主題の再浮上と、それに伴う 19 世紀末以来の群集をめぐる思考の枠組みの再検討、および集団の⾏動に関する新たな知⾒の形成を念頭において、両⼤戦間のドイツ語圏の⽂学にみられる群集表象を読み直すことを試みます。
私の発表では、本シンポジウム全体の問題意識を概括的に⽰したうえで、ヴァイマル共和国時代に書かれた都市⼩説に登場する登場⼈物の振舞いを同期と拡散という観点から考察します。具体的には、1932年に出版されたマルティン・ケッセルの都市小説 Hernn Brechers Fiasko を取り上げ、動物の群れの振舞いを対象とする⾃然科学的研究において提出され、パフォーマンス研究において⼈間の集団的な行動の分析のためにアッ プデートされた「同期」の概念を援用して、登場人物の間に生じる特異な共同性のありようを考察します。