“なぜ文化学は自然を対象領域のひとつとすべきなのだろうか? 古代ギリシア以来、「おのずからそこにあり、成長するもの」(physis)は、「みずからの存在を他の存在に負っているもの、この他の存在によって<措定される>もの」(thesei)から区別されてこなかっただろうか? 文化学と自然科学との近代的な区分は、自然と文化とを概念的に区別することによって準備されたのではなかったか? 文化学は自然を、それと物質的に関わりをもつ者たちに、つまり、自然科学者や技術者や農民たち等々にゆだねるべきではないだろうか? 科学の美徳である経済性という観点からいっても、文化学をこの自然という領域から解放し、負担を軽減してやることが賢明とはいえないだろうか? しかし、いくつかの理由からそうすることは不可能である。”
本論考は、ベルリン・フンボルト大学文化学研究所において文化理論担当教授を務めるハルトムート・ベーメ(Hartmut Böhme)氏が、2000 年に出版された文化学(Kulturwissenschaft)の入門書のために執筆した論文です。英米のカルチュラルスタディーズとは異なるアクセントを持つベルリン文化学の特徴のひとつである「自然の文化史」という主題系を簡潔に概観しています。
初出は『表現文化』(大阪市立大学大学院文学研究科表現文化学教室) no. 1、2006年 です。

