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論集『「群集」を再訪する — ただしパトスなしに』が刊行されました

2024年秋に日本独文学会で開催されたシンポジウムにもとづく論集がオンライン刊行されました。同シンポジウムでは、2000年代以降に人文学諸分野で生じた群集(Masse)という主題の再浮上と、それに伴う19世紀末以来の群集をめぐる思考の枠組みの捉え直しに注目し、集団の行動 (ふるまい)に関する新たな知見も視野に収めつつ、今日的な視点から両大戦間のドイツ語圏の文学にみられる群集表象を再検討することを試みました。本論集はそこでの発表をベースにしつつも、全面的に改稿された論考から構成されています。具体的には、アルフレート・デープリン、ヘルマン・ブロッホ、エルンスト・ユンガー、フロイト、マルティン・ケッセル、クラカウアーといった作家のテクストに現れる群集の表象と群集をめぐる思考が論じられます。

文楽座東京公演の照明と国立劇場の現在

 2024年9月に新国立劇場で開催された文楽鑑賞教室はなかなか興味深いものだった。忘れないうちにメモしておきたい。今回、わざわざ東京の公演を見に行ったのは、二つの理由からだった。ひとつは、会場が現代演劇で使われるブラックボックスの劇場(The Pit)だったこと。もうひとつは、新… Read More »文楽座東京公演の照明と国立劇場の現在

【刊行】『人形浄瑠璃の「近代」が始まったころ 観客からのアプローチ』

このたび和泉書院から書籍を刊行しました。大正末期から昭和十年代にいたる人形浄瑠璃の歩みを観客史の観点から論じた著作です。タイトルが示す通り、演者や興行主ではなく、劇場で舞台を楽しんでいた観客たちの経験に注目して、人形浄瑠璃の「近代」の始まりを描き出しています。古典芸能を愛する人だけでなく、古典芸能なるものに違和感(胡散臭さ)を感じている人にとっても面白く読める本になっていると思います。内容を簡単に紹介します。

隠れ家としての書物の「その後の生」
書評『一冊の、ささやかな、本』

表象文化論学会の学会誌『表象』18号に書評を執筆しました。田邊恵子さんの著書『一冊の、ささやかな、本 ヴァルター・ベンヤミン『一九〇〇年ごろのベルリンの幼年時代』研究』です。本書はめでたく第15回表象文化論学会賞(奨励賞)を受賞しました。

「無知な観客」の誕生
四ツ橋文楽座開場後の人形浄瑠璃とその観客

本論文の主題は、昭和5年1月の四ツ橋文楽座の開場前後に生じた人形浄瑠璃を取り巻く環境の変化を観客という観点から考察することです。本論文では、四ツ橋文楽座の開場とともに出現した新しい観客たちを「二重の無知」によって特徴づけられる観客として定義したうえで、彼がどのように人形浄瑠璃の舞台に向き合ったのかを三つの観点から検討しています。
本論文は人形浄瑠璃の近代を観客史の観点から検討する一連の仕事の第2段です。この仕事は最終的に4本の論文から構成される予定です。

最高にかっこいい映画監督

青山真治監督が亡くなった。私は監督に近い人からなんとなく状況を聞いていたので、心の準備をしながら最近の日々を過ごしていた。もしなにも知らずに訃報に触れていたならば、ほんとうに打ちのめされるようなショックを受けただろうと思う。もちろん喪失感は大きい。監督が boid マガジンに連載… Read More »最高にかっこいい映画監督

セルゲイ・ロズニツァ 自由裁量の王国

 ロズニツァの『アウステルリッツ』(2016年)でもっとも驚かされるのは、被写体への関与の徹底した欠如だ。この映画には被写体と向きあうという契機がほとんど存在しない。撮影する側が被写体のふるまいや存在の仕方に影響を与え、撮影されることで被写体が変化するというようなプロセスが存在し… Read More »セルゲイ・ロズニツァ 自由裁量の王国

第10回都市文化研究フォーラム
「目覚めるために夜へ:ロマン派的トポスにたいする神秘思想と近代文学の双方向的観点による研究」

来たる2021年2月9日に大阪市立大学都市文化研究センターの主催でフォーラムを開催します。ヤーコプ・ベーメの神秘思想とベンヤミンによるロマン派受容の観点から、ノヴァーリスとロマン派の思想を再検討します。
私はモデレーターとして参加します。
オンライン開催ですので奮ってご参加ください。

『文化接触のコンテクストとコンフリクト』が刊行されました

2015年度に開催された大阪市立大学国際学術シンポジウム「文化接触のコンテクストとコンフリクト EU諸地域における環境・生活圏・都市」の発表と議論をもとにした論集が刊行されました。私は第1部に収録されたヨアヒム・ラートカウ氏の講演「古い都市と森林 持続可能性の隠された諸起源」の翻訳と、第2部「〈合同生活圏〉 共生か敵対か?」の解題執筆を担当しています。

『ドイツ反原発運動小史 原子力産業・核エネルギー・公共性』

このたびヨアヒム・ラートカウ著『ドイツ反原発運動小史 原子力産業・核エネルギー・公共性』がみすず書房から翻訳出版されました。『自然と権力』に続き、今回も私と森田直子さんとの共訳です。本書は昨年秋に『みすず』に掲載され話題になった論考「ドイツ反原発運動小史」を含む4つ論考とオリジナルのインタビューから構成されています。

『自然と権力』について

このたびドイツの環境史家ヨアヒム・ラートカウの『自然と権力』をみすず書房から翻訳出版しました。ドイツ近代史家の森田直子さんとの共訳です。この日本語版では、ドイツ語初版(2000年)を底本にしつつ、英語版(2008年)でなされた主要な改訂も反映し、さらに日本の環境史を論じた一節と序言、あとがきを書き下ろしで収録しています。したがって、ほとんど改訂版に近い内容です。目次などの書籍情報はみすず書房のサイトをご覧ください。
本書を紹介する小文を以下に掲載します。ほぼ同じものが出版社のサイト(上記)にも掲載されています。