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Japan

「天下」を降りた男
『黒牢城』の反-政治

目下、黒沢清監督は新たな黄金期の真只中にいる。そう感じているのは私だけではないだろう。この黄金期は『モダンラブ・東京』の第5話から始まった。『スパイの妻』も含めて2010年代の作品を思い返してみると、初見では面白いのに、見直してみると意外なほど退屈する作品が多かった(例外は『岸辺の旅』と『旅のおわり世界のはじまり』)。それに対して「彼を信じていた十三日間」以… Read More »「天下」を降りた男
『黒牢城』の反-政治

『ナミビアの砂漠』のフレーム

いくつか書いておきたいことがあったのに、諸々の雑事にかかずらっているうちに、あっという間に年度末になってしまった。すでに完全に時機を逸しているとはいえ、書かないままにしておくのも気持ちが悪いし、すぐに古びる作品でもないと思うので『ナミビアの砂漠』についてメモしておきたい。 私が最初に見た山中瑶子監督の作品は『あみこ』(2017年)だった。わりと退屈したのを覚… Read More »『ナミビアの砂漠』のフレーム

【刊行】『人形浄瑠璃の「近代」が始まったころ 観客からのアプローチ』

和泉書院から書籍を刊行しました。大正末期から昭和十年代にいたる人形浄瑠璃の歩みを観客史の観点から論じた著作です。タイトルが示す通り、演者や興行主ではなく、劇場で舞台を楽しんでいた観客たちの経験に注目して、人形浄瑠璃の「近代」の始まりを描き出しています。古典芸能を愛する人だけでなく、古典芸能なるものに違和感(胡散臭さ)を感じている人にとっても面白く読める本にな… Read More »【刊行】『人形浄瑠璃の「近代」が始まったころ 観客からのアプローチ』

「無知な観客」の誕生
四ツ橋文楽座開場後の人形浄瑠璃とその観客

本論文の主題は、昭和5年1月の四ツ橋文楽座の開場前後に生じた人形浄瑠璃を取り巻く環境の変化を観客という観点から考察することです。本論文では、四ツ橋文楽座の開場とともに出現した新しい観客たちを「二重の無知」によって特徴づけられる観客として定義したうえで、彼がどのように人形浄瑠璃の舞台に向き合ったのかを三つの観点から検討しています。 本論文は人形浄瑠璃の近代を観… Read More »「無知な観客」の誕生
四ツ橋文楽座開場後の人形浄瑠璃とその観客

最高にかっこいい映画監督

青山真治監督が亡くなった。私は監督に近い人からなんとなく状況を聞いていたので、心の準備をしながら最近の日々を過ごしていた。もしなにも知らずに訃報に触れていたならば、ほんとうに打ちのめされるようなショックを受けただろうと思う。もちろん喪失感は大きい。監督が boid マガジンに連載していた日記を少しでも読めば誰にでもわかるように、現在の日本における最大級の映画… Read More »最高にかっこいい映画監督

ドイツと日本の総選挙の基礎データ比較(メモ)

今年の秋はドイツの連邦議会(Bundestag)と日本の衆議院で相次いで選挙があった。 ドイツでは誰も望んでいなかった大連立がようやく終わり、社会民主党(SPD)・緑の党(die Grünen)・自由民主党(FDP)の連立政権が成立しそうな流れ。日本では政権交替を望まない人々が投票者の多数を占めることが明瞭になり、現行の選挙制度が続く限り、少なくとも今後10… Read More »ドイツと日本の総選挙の基礎データ比較(メモ)

自由の制限を制限すること:法規制レジームと自粛レジーム

最近ドイツのニュースを読んだり見たりしていると、毎日のように、新型コロナウィルス対策としてなされる行動規制とその緩和を争点とする裁判とデモの報道がある。たとえば、最近話題になった事例として、ベルリンのシャルロッテンブルクのディスコが、ダンス禁止の州条例に異議を申し立て、ベルリンの行政裁判所が原告の訴えを認めた裁判がある。報道によれば、裁判所の判決は以下の通り… Read More »自由の制限を制限すること:法規制レジームと自粛レジーム

REPRE Vol. 40 に報告を書きました

表象文化論学会のニュースレター REPRE Vol. 40 にシンポジウム「コロナ禍の文化と表現」についての報告を執筆しました。 今回の学会は新型コロナウィルスの影響のためオンライン開催になりましたが、コロナウィルスが文化に与えるインパクトとそれが提起する問いを議論した本シンポジウムは、私たちの現在を批評的に思考する刺激的な機会になったと思います。

映画川 『大和(カリフォルニア)』

boidマガジンに映画評を寄稿しました。今回は宮崎大祐監督の『大和(カリフォルニア)』について書いています。本作は2018年4月7日より、新宿のK’s cinema を皮切りに全国6都市の映画館で順次公開されることになっています。米軍厚木基地の立地である大和市を舞台にしたこの作品は、日本とアメリカの関係を主題にした作品としてだけでなく、今日の地方都市の匿名的… Read More »映画川 『大和(カリフォルニア)』

弁天座の谷崎潤一郎 
昭和初年の「新しい観客」をめぐる一試論

本論文は大阪市立大学都市文化研究センターによる研究プロジェクト「伝統芸能の近代化とメディア環境」の成果物です。 本論文の根底にある問題関心は、近代以降の視聴覚的メディア環境に慣れ親しんだ(そして義太夫の音曲的側面には疎遠な)観客の出現をめぐる歴史的考察であり、とりわけ近代の大都市とメディアの経験によって形作られる感受性(モダニティの感受性)を内面化した「新し… Read More »弁天座の谷崎潤一郎 
昭和初年の「新しい観客」をめぐる一試論

『名前のない森』短評(ベルリン映画祭報告より)

京都みなみ会館の「さよなら興行」で青山真治監督の『名前のない森』が久方ぶりに上映されるということなので、かなり以前に書いた文章を発掘しました。 この短文の批評は 2002年に boid.net(旧サイト時代)に掲載された「ベルリン映画祭報告」の一部で、ちょうどベルリン留学中だった私は、フォーラム部門に出品された本作品の上映に駆けつけたのでした。そして1回見た… Read More »『名前のない森』短評(ベルリン映画祭報告より)