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海老根 剛(Takeshi Ebine)

隔てる音と架橋する声 / 『ケイコ 目を澄ませて』

三宅唱監督の『ケイコ 目を澄ませて』(2022年)が音の映画であることはすでに各所で論じられているし、監督自身も音の重要性について語っているけれども、この映画の「音声」において、「音」と「声」が対極的とも言える機能を担っていることは、あまり語られていないように思う。私が映画館(いつもの出町座!)で見て気づいたことを簡単にメモしておきたい。  観客にとって、こ… Read More »隔てる音と架橋する声 / 『ケイコ 目を澄ませて』

描出と再現(ミシェル・シオン)

授業で使用する教材として日本語に訳した文章を公開します。今回訳出したのは、ミシェル・シオン『オーディオ-ヴィジョン』(L’Audio-Vision)第1部・第5章にある「描出と再現」と題された一節です。ここでシオンは「描出」という概念に基づいて映画の音を再考しています。映像と音声の全面的なデジタル化の進展の初期に書かれた文章ですが、「実写」映画とアニメーショ… Read More »描出と再現(ミシェル・シオン)

夢の映画、音の映画 /『はだかのゆめ』

『はだかのゆめ』(甫木元空監督)は、そのタイトルが示唆するように、夢の構造を備えている。この作品では、私たちが大雑把に「現実」と呼んでいるものの論理は骨抜きにされ、「ここ」と「あそこ」の隔たりも、現在/過去/未来の区別も、生きているものと死んでいるものとの差異も、生物と無生物の違いも、すべてが曖昧になり、繋がり合い、混ざり合ってしまう。そうした夢の映画の作り… Read More »夢の映画、音の映画 /『はだかのゆめ』

REPRE 46 に報告を書きました

2022年7月2日・3日に東京都立大学で開催された表象文化論学会第16回大会の大会報告を執筆しました。私が担当したのは、2日目の午前に開催された「開催校企画ワークショップ 映画理論の現在」です。当日は久しぶりの対面開催ということもあり、充実した登壇者の報告とディスカッションで会場は熱気に包まれました。

戸惑いをもたらす映画の豊かさ 
青山真治監督の仕事

 7月31日に出町座で青山真治監督の「北九州サーガ」について話をすることになったので、7月はその準備のため、いま見ることのできる青山監督の長編作品を時系列に沿って順番に見直していた。  それは驚きの連続だった。「自分は当時、いったい何を見ていたのか」と愕然とすることが多かった。『こおろぎ』のように比較的最近に映画館で上映された作品や『名前のない森』のようにお… Read More »戸惑いをもたらす映画の豊かさ 
青山真治監督の仕事

「青山真治監督 北九州サーガ連続上映」@出町座でトークします

8月4日までの予定で京都・出町座で開催中の青山真治監督<北九州サーガ>特集が開催されています。今回新たにデジタル化された『Helpless』(1996年)、『EUREKA』(2000年)、『サッド ヴァケイション』(2007年)が連続上映されます。私は7月31日(日曜日)の『サッド ヴァケイション』の上映後にトークさせていただきます。

『MADE IN YAMATO』のパンフレットに文章を寄せました

5月28日より順次全国で公開されるオムニバス映画『MADE IN YAMATO』のパンフレットに短い文章を寄稿しました。竹内里紗監督の「まき絵の冒険」という作品について書いています。ふたりの女性に捧げられた素晴らしい作品です。このオムニバス映画については、どうも大和市を舞台にしているという企画性が強調されすぎているような気がするので、ごくシンプルに映画として… Read More »『MADE IN YAMATO』のパンフレットに文章を寄せました

If One Thing Matters, Everything Matters. / 「まき絵の冒険」(『MADE IN YAMATO』)

ペドロ・アルモドバルの『グロリアの憂鬱』(1984年)は、とても印象的なクレーンショットからはじまる。この映画はマドリード市の東側、M-30と呼ばれる環状高速道路に隣接したコンセプシオン地区を舞台にしているが、カメラはまずそれほど大きくない広場で撮影の準備をしている映画のロケ隊をやや俯瞰気味のロングショットで映し出す。このカメラはゆっくりと下降しながら右方向… Read More »If One Thing Matters, Everything Matters. / 「まき絵の冒険」(『MADE IN YAMATO』)

「無知な観客」の誕生
四ツ橋文楽座開場後の人形浄瑠璃とその観客

本論文の主題は、昭和5年1月の四ツ橋文楽座の開場前後に生じた人形浄瑠璃を取り巻く環境の変化を観客という観点から考察することです。本論文では、四ツ橋文楽座の開場とともに出現した新しい観客たちを「二重の無知」によって特徴づけられる観客として定義したうえで、彼がどのように人形浄瑠璃の舞台に向き合ったのかを三つの観点から検討しています。 本論文は人形浄瑠璃の近代を観… Read More »「無知な観客」の誕生
四ツ橋文楽座開場後の人形浄瑠璃とその観客

2022年度 専門科目シラバス

表象文化構造論研究 今年度は一年を通して「動画」としてのアニメーション研究の方法論を議論していきます。日本のアニメーション(アニメ)を研究するトーマス・ラマールは、2009年の著書『アニメマシーン』の序論において、現在のアニメ研究はアニメーションが「動画」からなることを看過していると指摘しました。物語の解釈や主題をめぐる哲学的思弁、日本社会論・日本文化論的な… Read More »2022年度 専門科目シラバス

最高にかっこいい映画監督

青山真治監督が亡くなった。私は監督に近い人からなんとなく状況を聞いていたので、心の準備をしながら最近の日々を過ごしていた。もしなにも知らずに訃報に触れていたならば、ほんとうに打ちのめされるようなショックを受けただろうと思う。もちろん喪失感は大きい。監督が boid マガジンに連載していた日記を少しでも読めば誰にでもわかるように、現在の日本における最大級の映画… Read More »最高にかっこいい映画監督

近松という参照点:『人間浄瑠璃』雑感

苦節30年、いよいよ本当に開館した大阪中之島美術館で、森村泰昌&桐竹勘十郎による『人間浄瑠璃 新・鏡影奇譚』を見てきた。私は近代の人形浄瑠璃の観客史に関心があり、大正から昭和までの資料を調べ、論文も書いているが、研究関心の消失点をなしているのは、リアルタイムで進行中の人形浄瑠璃の上演形態と観劇体験のラディカルな流動化である。2012年に橋下大阪市長が文楽に対… Read More »近松という参照点:『人間浄瑠璃』雑感